アーツ前橋

展覧会

闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s【終了】

2019.02.02 - 2019.03.24

 木版画は、特殊な素材や道具を必要とせず、また安価に複数の作品を制作できるDIY的な簡便さゆえに、美術の世界を超えて、アジア各地の政治・社会運動のなかでしばしば制作されました。自分の感情を主体的に表現し、社会の問題をえぐりだし、遠隔地の人々との連帯を求める「メディア」として、木版画はアジアの近代化に重要な役割を果たしました。

 1930年代に魯迅が推進した木版画は巨大な運動体となって中国各地で展開します。日本では戦後の民主化運動やサークル誌で木版画が盛んになり、多数の中国版画展が開かれました。1980年代の韓国では、激烈な民主化運動のなかで木版画が多様な手段で大活躍します。今日のインターネット時代でも、インドネシアやマレーシアではパンク音楽家や美術家グループが、自由と自立を求めるメッセージを木版画で発信し続けています。

 本展は、以上の時代・地域の作品のほか、ベンガルの独立運動、シンガポールの日常、ベトナム戦争、フィリピンの闘争などをテーマとした木版画(リノカットを含む)作品と版画を掲載した印刷物などの資料あわせて約400点を紹介します。木版画を大衆的な「メディア」としてとらえ、異なる時代と地域をつなぐ版画運動のネットワークに注目する本展が、日本を含むアジア近現代美術史全体をとらえなおす契機になればと思います。

 また、本展は福岡アジア美術館、美術館連絡協議会との共同開催となります。福岡アジア美術館の展示構成に加え、アーツ前橋では、現代社会における諸問題を扱い、地域の人々と共に活動を行うアーティストの表現として、韓国鍾路区(チョンノグ)にて再開発により立ち退きが決まった団地で住民たちと多様なプログラムを行ったアーティストグループのオギン・コレクティヴ(韓国)、移民の労働問題や海洋汚染問題に目を向け、様々なプロジェクトを行うイルワン・アーメット&ティタ・サリナ(インドネシア)の2組を紹介します。

※お知らせ
出展を予定しておりましたオギン・コレクティヴは、作家都合により展示を取りやめることとなりました。

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会期:2019年2月2日(土)―2019年3月24日(日)

開館時間:11時~19時(入場は18時30分まで)

休館日:水曜日

主催:アーツ前橋、読売新聞社、美術館連絡協議会

共催:福岡アジア美術館

協賛:ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜、日本テレビ放送網

後援:上毛新聞社、朝日新聞社前橋総局、毎日新聞前橋支局、産経新聞前橋支局、東京新聞前橋支局、共同通信社前橋支局、時事通信社前橋支局、NHK前橋放送局、群馬テレビ、FM GUNMA、まえばしCITYエフエム、前橋商工会議所

観覧料:一般500円/学生・65歳以上・団体(10名以上)300円/高校生以下無料
※障害者手帳等をお持ちの方と介護者1名は観覧無料
※3月21日(木・祝)は、「国際人種差別撤廃デー」のため、観覧無料
※2月24日(日)は、観覧無料
※前橋市内日本語学校(告示校・6校)に在学している外国人留学生は観覧無料
※本展会期中割引・・・・・以下の条件でご来場の方は、観覧料300円
①トワイライト割:開館中の17時以降にご来場された方
②映画割:前橋シネマハウスで上映する「タクシー運転手」「1987、ある闘いの真実」の半券をご提示の方。

会場:アーツ前橋地下ギャラリー

*一部作品は展示替えがあります。詳しくはこちら。

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展覧会構成

1. 1930s 上海:ヨーロッパの木版画、中国で紹介される
1930年以降の上海で、魯迅がケーテ・コルヴィッツほかヨーロッパ各地の近代木版画を出版物で紹介し、表現主義的な木版画が新興木版画運動の素地となる。 

2. 1930s中国と日本:版画運動が発展、美術の大衆化の動き
1931年8月の上海で、魯迅の発案により内山嘉吉を講師とする木版画講習会が開かれ、13人の若い中国作家が参加。彼らは日常生活の不安、社会に対する怒りを表現していく。その後、政治的弾圧や戦乱のなかでも木版画運動は中国各地に拡大。日本ではプロレタリア美術運動が印刷による美術の大衆化を求める。

3. 1940s-50s 日本:美術の民主化、中国版画ブーム
終戦により日本の民主化への動きが高揚するなかで北関東を中心に木版画運動が展開し、職場・地域サークルでも木版画が盛んになる。日本各地で200回を超える中国木版画展が開かれる。

①ケーテ・コルヴィッツ「寡婦」福岡市美術館所蔵 ②改チェン・バオチェン(陳葆真)「光は頭上に」神奈川県立近代美術館所蔵 ③-2改「現代中日版画展 解説」表紙 飯野農夫也画業保存会所蔵
左:ケーテ・コルヴィッツ≪寡婦≫1922-23年、福岡市美術館蔵
中:チェン・バオチェン(陳葆真)≪光は頭上に≫、1932年頃、神奈川県立近代美術館蔵
右:「現代中日版画展 解説」表紙、1947年、飯野農夫也画業保存会蔵


4. 1940s-50s ベンガル:土地を奪還せよ
ベンガル(現インド東部とバングラデシュ)で、農民運動、反帝国主義などをテーマとした版画が制作される。

5. 1950s-60s インドネシア:新聞にみる版画交流
冷戦時代にインドネシアが主導した第三世界の連帯のなかで、自国およびアジア各地の作家による木版画が新聞で紹介される。

6. 1950s-60sシンガポール:大陸から南洋の日常へ、版画と漫画の交錯
大陸への帰属意識が強かったシンガポールの中国系作家は、イギリスとマレーシアからの独立の過程のなかで、シンガポールの南洋生活に独自のアイデンティティを見出すようになる。

④改チッタプロサド「飢饉」福岡アジア美術館所蔵 ⑤スハルジヤ・プジャナディ「農民のための土地」(複製展示)
左:チッタプロサド≪飢饉≫1952年、福岡アジア美術館所蔵 
右:スハルジヤ・プジャナディ≪農民のための土地≫(「人民日報」1964年10月25日号)より


7. 1960s-70s ベトナム戦争の時代:国境を超えた共闘
ベトナムでは民俗芸術と融合した戦争主題の木版画が作られ、一枚の中国版画がパキスタンやアメリカまで南ベトナム支援や女性解放闘争のシンボルとして広まっていく。

8. 1970s-80s フィリピン:独裁政権との闘い
1970年代末から結成された〈カイサハン(連帯)〉などの美術家グループが、マルコス大統領の独裁政権に抵抗する労働者や農民の闘争を支援していく。

ドンホー ⑧レオニーリョ・オルテガ・ドロリコン「農園のなかで」福岡アジア美術館所蔵
左:ドンホー版画 ≪奴らを逃がすな≫1972年、個人蔵
右:レオニーリョ・オルテガ・ドロリコン(フィリピン)≪農園のなかで≫(部分)2014年 福岡アジア美術館蔵


9. 1980s-2000s韓国:高揚する民主化運動で木版画が大活躍
1980年5月の「光州民衆運動」を契機に、韓国各地に反独裁の民主化運動が拡大、「民衆美術」が成長していく。木版画は政治集会やデモ、出版や市民学校など運動の様々な局面で重要な役割を果たす。

10. 2000s-インドネシアとマレーシア:自由を求めるDIY精神
1998年のスハルト政権崩壊の前後、音楽家、美術家、学生、政治活動家らが結成した集団(コレクティヴ)が、政治の腐敗や環境破壊を告発、農村・漁村の民衆を支援する。DIY (Do It Yourself)精神から、木版画メディアが復活をとげ、その影響がアジア各地に及ぶ。

⑨ホン・ソンダム「五月-25 大同世-1」福岡アジア美術館所蔵 ⑩タリン・パディ「泉を守れ」福岡アジア美術館所蔵
左:ホン・ソンダム≪五月-25 大同世-1≫1984年、福岡アジア美術館蔵
右:タリン・パディ(インドネシア)≪泉を守れ≫2009年、福岡アジア美術館蔵

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       ソーシャル・インタラクション      アート
アジアの社会的相互行為としての美術

木版画運動は、社会の変化を求める思想の中で、常に人々に寄り添い、一般の人々を巻き込みながら展開されてきました。近年でも、社会や政治に対する働きかけや人々と協働し、社会課題に取り組もうとする表現として、「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(社会関与型芸術)」と呼べるような動向が国や地域を問わず見受けられます。一方的な表現の伝達ではなく、双方向のやり取りによって社会的相互行為が成立するものと特徴づけられます。同時代の動向において、高い評価を得ているアジアのアーティスト2組を紹介します。

オギン・コレクティヴは、作家都合により展示を取りやめることとなりました。あわせまして、2月3日(日)に予定しておりました「オギン・コレクティヴ アーティスト・トーク」も中止いたします。


参加アーティスト

イルワン・アーメット&ティタ・サリナ/Irwan Ahmett & Tita Salina

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ジャカルタ(インドネシア)を拠点に活動。ジャカルタ・インスティテュート・オブ・アートでグラフィックデザインを学び、アーメット・サリナ スタジオデザインを設立。2010年から公共空間における都市問題や社会的・政治的問題を創造的な資源としてアートプロジェクトとして扱う。これまでインドネシア、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ドイツ、日本での滞在制作に参加。シンガポールビエンナーレ(2013年)、瀬戸内国際芸術祭(2013年)、アジアン・アート・ビエンナーレ(2015年)、ジョグジャカルタ・ビエンナーレ(2015年)などに参加。2017年~2018年にかけ、アーツ前橋滞在制作事業に参加。2018年に行われた「つまずく石の縁 地域に生まれるアートの現場」参加。


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左:ティタ・サリナ《1001つ目の島―群島の中の最も持続可能な島》2014 映像 14分11秒 photo : Yopie Nugraha
右:《花の通貨ートンファ》2017年 映像 6分48秒 photo:Irwan Ahmett & Tita Salina


オギン・コレクティヴ/Okin Collective


オギン・コレクティヴは、2009年よりイ・ジョンミン、キム・ハヨン、ジン・シウにより活動を開始。コレクティヴとして活動を開始したソウル市鍾路区(チョンノク)の「オギン・アパートメント・コンプレックス」にちなんで名付けられ、その立ち退きを命じられた複合施設から出発し、都市問題と密接に関連しているが、彼らの作品は常に日常や多様な芸術の境界を越えて、広く社会の条件を巻き込んでいる。これまでの活動に、「オギンオープンサイト」(2010年、オギンアパート/ソウル)、「Life, No Peace, Only Adventure」(2011年、釜山市立美術館)、「Open Hangar」(2012年、スペイン)、「Truth is Concrete」(2012年、オーストリア)、「Acts of Vocing」(2013年、トータルミュージアム/ソウル)、「ARTEFACT FESTIVAL 15」(2015年、STUC/ベルギー)、「Rien ne va plus? Faites vos jeux!,」(2016年、デ・アペル・アート・センター/オランダ)、光州ビエンナーレ(2018年、光州)、「Korea Artist Prize」(2018年、韓国国立現代美術館/ソウル)などがある。2010年9月からOkin Collective Internetラジオ局[STUDIO + 82](http://okin.cc)を運営。

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【関連イベント】

(1)オープニング・トーク 「アジア近代美術の伏流―抵抗と解放の木版画運動」
※申込人数が定員に達しましたので、申込み受付を終了とさせていただきます。

日時:2月2日(土) 14時~16時
会場:アーツ前橋スタジオ
講師:黒田雷児(福岡アジア美術館運営部長)
参加費:無料
定員:40名
※事前申込制(アーツ前橋へ電話027-230-1144)


※中止となりました。
(2)オギン・コレクティヴ アーティスト・トーク

日時:2月3日(日) 14時~15時30分
会場:アーツ前橋 ギャラリー2
講師:オギン・コレクティヴ(出展作家)
参加費:無料(要観覧券)

(3)トーク 「転換期の文化と運動:戦後初期の版画」
日時:3月16日(土) 14時~16時
会場:アーツ前橋スタジオ
講師:ジャスティン・ジェスティ(ワシントン大学教授、日本美術研究家)
参加費:無料
定員:40名
※事前申込制(アーツ前橋へ電話027-230-1144)

(4)学芸員によるギャラリーツアー
日時:2月9日(土)13時~14時

      3月10日(日)13時~14時
集合場所:アーツ前橋1階総合案内前
参加費:無料(要観覧券)/申込不要


(5)ロビーライブvol.19 沖縄民謡とサーフ
日時:3月9日(土)14時~15時

ゲスト:Maico
場所:アーツ前橋 交流スペース
料金:無料/申込不要

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協力企画:映画上映 「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」&「1987、ある闘いの真実」

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COPYRIGHT © 2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

映画「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(韓国、2017年、主演:ソン・ガンホ)

期間:2019年2月9日(土)~2月22日(金)

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コピーライト ©2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM ALL RIGHTS RESERVED

映画1987、ある闘いの真実(韓国、2018年、主演:キム・ユンソク)

期間:2019年2月23日(土)~3月8日(金)

会場:前橋シネマハウス(前橋市千代田5-1-16 アーツ前橋上/3F) https://maecine.com/

※前橋シネマハウスで「タクシー運転手」/「1987、ある闘いの真実」をご覧になり、チケットの半券をご提示の方は観覧料300円で「闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s」をご覧いただけます。

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【お問い合わせ・お申込み】

アーツ前橋
TEL: 027-230-1144
FAX: 027-232-2016
E-mail: artsmaebashi@city.maebashi.gunma.jp

 

 

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