アーツ前橋

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再開のメッセージ

私たちは今、未知のウイルスと向き合っています。多くの人が他の人との接触をできるだけ避けるいっぽうで、医療、福祉、流通、清掃等の分野では休むことなく努力を続けている人たちがいます。こうした専門的な知識や経験によって安全な生活を支えている方々に心から感謝を申し上げます。そして、皆さまとご家族、ご友人の健康や仕事が、今も今後も安全に保たれ、もし困難に直面していても少しずつ回復されることを祈っています。
アーツ前橋は約三ヵ月臨時休館していましたが、6月1日から活動を再開します。休館の間に私たちも混乱し、戸惑い、急な対応に追われました。運営を支えるスタッフの安全についても、皆さんと同じようにさまざまな個別の事情があります。それを踏まえたうえで、「自分にできることをする」(*)ために以下の活動をおこなうことにしました。詳細は今後随時お伝えします。

1) 展覧会やイベントは変更や縮減し、年間を通して収蔵作品の展示をおこない、安全を確保したうえでおこなえる活動を再開します。
2) 助成制度や作品購入によって地域の芸術活動を支える人たちを支援します。学校や福祉施設とも協働して、安全を確保しておこなえる表現活動を実践します。
3) 自宅や遠隔地でも展覧会、ラーニング事業、地域アートプロジェクトなどの各種記録を見ていただけるようにウェブサイトで情報発信をおこないます。

深刻な厄災の影響はまだ計り知れませんが、大事につくった生産物を届けられない、大切な人と会うことができない、長い時間かけて努力してきた成果を見せられない、など、いろいろな思いが突然断ち切られています。家族との関係、介護の必要性、収入の減少、慣れない異国での生活など、人との接触を断つと生活するのが難しい人たちも数多くいます。
人間はけっして万能ではなく、脆弱な存在です。これからも私たちは自然からの恩恵と脅威を受け止め、異なる価値観や感じ方を持つ他人と一緒に生きていく必要があります。そのために人類が生み出した知恵が芸術です。それは、自分と他人の一番大事なものを見失わないための手段で、これから世の中が変わるときにきっと必要なものだと思っています。美術館は、そのように静かに歴史や個人の感覚に触れる機会を作り出し、人とは異なる自分らしさを確保する場所を作り出します。
私たちは東日本大震災を経験したときに、芸術や文化が人々を守る役割を担ってほしいと願いながらこの美術館の開館を準備しました。医療や福祉、食べもの/着るもの/住みかたと関わり、相互的な学びに取り組む試みをしてきたのもそういう理由でした。人々とこの地球上の生き物が安心して生きるために、医療、食糧、教育、文化、自然を大切にしていく社会になることを願っています。
いろいろな作品を見ながらそんな話ができる場所として美術館を大切に維持していきますので、ぜひ近いうちにお会いしましょう。それまでどうかお元気でお過ごしください。

2020年5月21日
アーツ前橋スタッフ一同


*《自分でできることをする》(2011年)は照屋勇賢がアーティスト・イン・レジデンスのために滞在していた前橋で制作した作品のタイトル。震災を報道する地元紙「上毛新聞」を使い、小さな植物の芽が出ている作品です。この作品は市民が共同購入し、アーツ前橋に寄贈され、照屋さんは収益を被災地支援に寄附しています。

 

 

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