【中島佑太×南橘団地】5・08雲をつかむ


2016年5月8日(日) 第一回ワークショップ

場所:南橘団地第二集会室(前橋市南橘町 1-11)

時間:13:00~17:00

スタッフ:中島佑太(以下、なかじ)、茂木克浩(群馬大学大学院生)、狩野未来(群馬大学学生)

参加者:合計48名(大人12人、子ども36人)(南橘団地居住者25人、うち子ども19人)

ワークショップの流れ

チラシへの記載を13時~17時としたために、13時に半数以上の人が集まった。最初にスタッフの簡単な紹介後、ワークショップを開始した。

模造紙にそれぞれが想像する雲を描く→板ダンに模造紙に描いた雲をトレースする→雲を切り取る→それぞれの雲に名前をつけたり、雲の擬音語を考えてみたりする→木の立て看板に雲を貼りつける→完成

なかじが準備した花紙を利用して、雲からさらに雨を降らせる。

このワークショップまでで、中学生以上の子どもたちは出て行ってしまい、ある程度小さな子たち(幼稚園~小学校低学年)がほとんど残った。その後、いくつかのワークショップが自然発生的に生まれていく。

また、子どもたちのワークショップの横で、大人用のワークショップとしてさき編みを行った。ただ、誰もそのやり方をわからない中で、誰が教えるでもなく、みなで考えながら行うワークショップとなった。さき編みには、いらなくなった白い布を使用することで、子どもたちのワークショップと同じく雲を作っていった。

ある程度落ち着いたところでいくつかのグループに活動が分かれた。

  1. 板ダンで雲を作り続ける→雲からコンセプトは離れ、好きなものを描き続ける子が多い。
  2. 雨に利用した花紙で遊ぶ→花紙で人を埋めてしまい、埋められた子の名前を皆で一斉に呼ぶ。すると、その子がむくっと起き上がる。
  3. さき編み
  4. てぶれを利用して雲の写真を撮影する。
  5. リレー方式で1枚の絵を描く

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15:00以降は、子どもたちが決まったワークショップではなく、そこからそれぞれ派生した活動をおのおのしながら遊び場のような空間になった。16:30頃から最後のまとめのワークショップとして、散らかった花紙を白い台紙に張っていくことで、それぞれのお弁当箱を作った。また、ポールに貼った雲を木に見立て花紙を貼っていくことで、花を咲かせていった。ワークショップであると共に、片付けの要素もあり、最後は、花の咲いた木の下でお弁当を食べる様子を写真に撮った。なかじから最後に、ここで作ったお弁当箱を家に帰ってお母さんに見せて、実際にお弁当を一緒に作ってみよう。とまとめることで、ワークショップは家に帰っても続いていくことが示唆された。

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アーティストの言葉

南橘団地第二集会室でワークショップ「雲をつかむ」を行った。急遽発案され、GW直前に団地全戸に告知チラシのポスティングを行い、子ども会の方への広報協力を前日に依頼しての開催だったので、集客が心配だったが、予想をはるかに超える40名超の来場があり、驚いた。参加者がまばらに来場することを予想していたので、13時の段階で異年齢が同時に集まることを想定できておらず、半ば無理やりにスタートさせてしまったため、中学生の女の子の参加意識を上げることができず、途中で帰ってしまったのが残念だったりと多くの反省が残ったので、記しておく。その他、ワークショップを通じて気になったことなどをメモする。

チラシに記載した『しゅっちょうこどもワークショップ』について

こどもワークショップと書いてあったにも関わらず、20代の女性や親たちも遊びに来てくれた。ご本人も子どもと書いてあったから迷ったと言っていた。彼女たちは関係者の娘さんだったので、来てくれたようだが、もしかしたら他にもチラシを見てくれた人の中で、子どもと書いていなければ来てくれた人がいたかもしれない。時々、「ワークショップは子ども向けのものか?」という質問を受けることがある。実際のところ、僕のワークショップの仕事のうち9割近くが子ども向けのものだが、ワークショップ自体の対象は子どもだけではない。

雲を描く理由について

なぜ最初に雲を描く必要があったのだろう。参加者には特にその必然性もないし、こちらもその”ノリ”を求めなかった。雲を描く動機がないから、参加者の中から雲ではなく自分の描きたいものを描き始める子が現れた。自分の好きなアイドルグループのメンバーやアニメキャラ、ワークショップスタッフの似顔絵や名札など。雲を描く必然性があったわけではないから、雲以外のものを描いてはいけない理由もない。そのとりとめもなくつかみどころのない、まさに雲をつかむような雰囲気の中から、雲から木への見立ての変容、散らかしたお花紙の片付けを兼ねたお弁当制作から、木に見立てた作品の下でお弁当を広げる遊びへの展開と、雲から始まり様々なイメージを辿るその想像の自由さと裏腹にあるワークショップの持つ必然性や縛りについては、改めて考えたい。

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ワークショップの制作物の中に、テレビで見たものが含まれることは珍しくない。表現者である参加者が「好きなもの」が表現されることは当たり前のことだと思う。その一方で、テレビで見知ったものの消費者であり続けることから抜け出す場、もしくは新しい表現の仕方を見つけることができる場として、アートがあったらいいと思う。

どこに住んでいるのか

今回のワークショップの対象は南橘団地に住む人々(当初は子どもたちを想定)だった。発案から実施までの時間が短かったため、集客できるのか見通しもなく、急遽清心幼稚園卒園の小学生や、伸びゆく子どもの集いに集まった近隣の小学生などにもチラシを配布した。結果大人も合わせて40人を超える集客があったが、果たして肝心の南橘団地に住む「対象者」がその中の誰だったのかは、一見すると分からなかった。一目では分からないのは、それが住所のことだからであろう。国内に住む日本人ならば、住んでいる住所で見た目に大きな違いはない。参加者の中の誰が南橘団地に住む人なのかを探る視点は、まるで犯人探しのように感じた。

また、民生委員さんや地域の方にお話を聞いた時に聞いていた東南アジア系のハーフ(?)の子たちが来てくれた。その子たちは南橘団地に住んでいて、お母さんが会場まで送ってくれたようだ。来てくれたことは素直に嬉しいのだか、彼らを「メインターゲット」として捉えてしまう気持ちがあった。アジア系ハーフの女の子(確か小5)がパンダの被り物をして近づいてきて、突然腹を思い切り殴られた。女の子とは言え、小学校高学年の手加減なしのパンチはなかなか重たかった。なぜ突然パンチを繰り出したのかは定かではない。その後突然紙を持ってやってきて、「なんかかいて!」と言われたので紙にペンで「なんか」という文字を書いた。すると「そうじゃない!」というので、何かよく分からない形を描いて渡し、「続きを描いて!」と言い、リレーで絵を書き足していく遊びが始まった。絵の一部分を別のものの部分に見立てて書き換えていくと「あー!そうきたかー!」と悔しそうでもあり楽しんでいてくれたようだった。パンチを繰り出した理由は分からないけれど、もしかしたらこちらがどんな大人なのか探っていたのかもしれない。また、彼らの作っていたお弁当にもっとフォーカスできればよかったのだが、すでにスタッフが作成していたものと交換されており、中身がよく分からなかった。

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入り口にバナーは必要だったのか?

今回は何種類かののぼり旗などを検討した結果、アーツ前橋のバナーを入り口に設置した。会場がここであるということを分かりやすくするために有効だったと思う。今井さん(アーツ前橋学芸員)から提案があったように、次回ワークショップをする時にも使える専用ののぼり旗などがあったらいいと思うが、どのような情報のデザインが良いのだろうか?

社会の中の様々な場面からエクスクルードされた人たちにスポットを当てるイベントが近年多く行われている。今回の企画のキーワードにもインクルーシブがあるが、何かが選ばれるということは、何か選ばれなかったものがあるということでもあり、パラドックスを感じざるを得ない。そこで重要なのは、インクルーシブというテーマからスタートしたプロジェクトが、どのように関わっている私たちの認識を作り出していくのか、ということや、このような文脈からこぼれ落ちた部分をどのようにアートが埋めていくことができるのかということなのではないかと感じた。

課題:定期性をイメージさせる

次回ワークショップでは、来場者にどんなワークショップがあったら良いか、おたずねできたら良いのではないか。アイデアを一緒に考えていくことで、定期性をイメージさせられるだけではなく、当事者性を感じてくれる人も増えることが期待できる。私たちが考え企画したイベントに来てもらって楽しんでもらう、という機会提供も重要な役割があるかもしれないが、私とそこにいる人とのごく個人的な共同作業が実現できたら嬉しい。

 

(執筆=中島佑太、撮影=木暮伸也、編集・投稿=今井朋)

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