【滝沢達史×アリスの広場】「話してみなきゃわからない」


<前回までのあらすじ>不登校の若者が通うフリースペース「アリスの広場」に美術部を立ち上げ2回を試みる。同じテーブルに座れないKさんも絵を描くときは参加できる不思議、絵にはまだ力があるかもしれないと思い3度目の美術部を行う。

 

毎月一度訪れる前橋の地、今日は真新しいキャンバスを用意している。なんだか初々しい気分だ。アリスに着くとMちゃんがもう来ている。最近知った「ひきこもりフェス(*1)」の話題を出すと、Mちゃんも興味があるらしく色々と教えてくれる。不登校業界(?)ではよく知られたイベントらしく、驚くことに埼玉スーパーアリーナの席が完売だという。最近は、「積極的ひきこもりが話題になることで、消極的ひきこもりの居場所が無くなっている」など新たな課題が生まれているというから、なんとも活発なひきこもりの業界の多様化は喜ばしい。

 

 (*1) ひきこもりフェス http://hikikomoridemo.jp

 

アリス美術部もそんな多様化の一つとなってほしいのだが、活動は今回で3回目となる。参加者は2人~5人と少人数だが、人が苦手な若者にとってはこれでも精一杯な集団活動だ。今日は久しぶりにO君が顔を見せてくれる。Mさんはほとんど口を開かないが毎度来てくれる。彼女とは今まで話したことがなく、いつも楽しいのだろうかと少し不安に思っていた。そんなことが気になり話しかけてみると、パソコンで描いているという絵を見せてくれた。ペンタブレットで描いたCGアニメは技術的にもかなりのもので、仕事にもすることも可能なレベルに思えた。「これなら充分仕事になるよ」と、背中を押す気持ちで感想を伝えると、彼女からは意外な答えが返ってきた。

『ある程度描けるようになった今、自分が本当に描きたい絵なのか疑問を感じています。もともとはネット上でしか発表の場がなかったから、ネットの流行に合わせて絵を描いて、それは自分が評価されたいからで、本当にやりたいことではないのかもしれない。だから、今はアナログな手法や手触りのある表現、そして現代美術のことも知りたいです。』

そんな彼女の言葉を聞いて、のけぞってしまった。控えめな彼女の中にもこんな情熱がある。

人は話してみなければわからないものだ。

(執筆・投稿 滝沢達史)

 

 

 

 

 

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