同じ釜の飯を食う


今年度の締めくくりに、アリスの広場と行く外泊旅行を企画した。この旅行は昨年に続いて2度目の企画で、内容といえば、ただの一泊温泉旅行なのだが、それでも参加メンバーにとっては経験したことのない領域ともなる。毎度の説明になるが、アリスの広場とは不登校やひきこもりと呼ばれる若者たちが通うスペースで、ここには中学生から20代後半の若者が通っている。良い呼び名が無いので、不登校・ひきこもりと呼んでいるが、状況はそれぞれ、学校に通い直した子もいれば、仕事を少しお休みしている人もいる。とにかくここには、今より少し自分を変えたいと思っている人たちが集まっている。

旅行の初日は予期せぬ大雪となり、急遽予定を変更して、ハラミュージアムアークにお邪魔させていただいた。天候のせいもあって、ほぼ貸切りの美術館は、僕らにとって幸いとも言える。いつも思うことだが、彼らは本当に一つ一つの作品を、じっくり時間をかけて見る。それは、古典から現代美術問わず、興味深そうに見る。そんな彼らを見て、何を考えているのかな?と僕は眺めている。今回は同じ表現の森参加アーティストの中島佑太君を誘ってみたが、僕ら2人は雪の中を犬のようにはしゃぎ回り、その姿は、アーティストって子供だな、という印象しか与えなかったかもしれない。アリスのメンバーといると恥ずかしい自分をよく見つける。

 

夜は一緒にご飯を作り、お酒を飲んで、ジェンガをして過ごした。彼らとの付き合いも2年になるので、些細な一つ一つの反応が嬉しい。それは、人に伝えたところで、なんの共感も生まないかもしれないが、最近東京から戻って、またアリスに顔を出すようになったK君は、ずっと続けばいいのに、と言った。

  

翌日、寝ぼけ眼で一緒におにぎりを握る。目玉焼き作りが初めての子もいる。煮立っていたお味噌汁は飲むときには冷めている。それでもなんだか賑やかで豊かな食卓だ。

共に行動し、寝て、同じ釜の飯を食う。ただそれだけのことを仕事にさせてもらっていることに、いいのかしらと不安になることもある。しかし、こうあらねば、というプレッシャーに悩まされている彼らの前では、声を大にしてホラを吹いていたい。これが美術家としての僕の仕事である。

(執筆・投稿 滝沢達史)

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