アーツ前橋

アーツ前橋について

館長挨拶

 

 アーツ前橋は2013年10月26日に開館し、今年で5年目を迎えます。前橋市の公立美術館としてはやや変わったこの名称も、今ではかなり浸透してきた気がします。開館前に世代も職種も超えたさまざまな人たちと、どのような美術館になるべきかについて議論し、これまでの「美術館」のあり方に縛られることなく、「アーツ(Arts)」という複数形に開かれたプログラムの期待を託され、その実現に向けて少しずつ歩んできました。

 美術は、そのような呼称もなかった時代から長い年月をかけて継続され、かつ変化も遂げてきた表現分野です。美術館は、その魅力を同時代に生きる人たちに相応しい方法で伝えていく役割を担っています。私たちはそのために調査や研究をおこない、貴重な作品や資料を収蔵し残していくことや、展覧会企画などの各事業に結実させています。とくに地域の芸術に眼を向けた活動は当館の特徴にもなっていますが、それは欧米中心に書かれてきた「美術の歴史」を多声的なものに書き直すような近年の動向に呼応しています。また、いくつもの戦争や災害を経験した人間が世界における自分たちの立場を問い直し、もっと他の種との共生や調和を目指す価値観も現代の私たちにとって大事なものと考えています。そうした私たちの考えは、名作や巨匠だけでなくもっと身近な存在や感覚に眼を向ける表現活動をアーツ前橋が取り上げてきたことに現れているはずです。

 美術館は、生きもののように人や社会と一緒に息をしていくものです。展覧会だけでなく、イベントやワークショップ、あるいは個人や団体と協働する継続的なプロジェクトもあります。こうした地域とかかわる息の長い実践のうち、これまで教育普及と呼んできた事業を相互的で持続的な「学び」の機会として「ラーニング」と名付けています。ぜひ作品の鑑賞以外にも、いろいろな美術館とのかかわり方があることを見つけていただければと思います。

 美術館は他者の表現を通じて異なる考えや感じ方に触れることができる点で、現代社会を生きる多くの人々にとって必要不可欠な施設だと考えています。これからも皆さまのご支援やご協力をどうぞよろしくお願いします。

 

2018年4月
アーツ前橋館長
住友文彦