アーツ前橋

展覧会

ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口

2024.4.27 - 2024.6.16

 

ポスターデザイン:須山悠里(suyama design)、撮影:エレナ・トゥタッチコワ

神話などからインスピレーションを得た物語的コレクションで知られる山縣良和のファッションレーベル〈リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)〉。そのノスタルジックな表現は、〈装う〉心の純粋性を追求しながらも、3.11からの再生を祈った《The seven gods》、ファッション業界へのアイロニーを込めた《Graduate Fashion Show》、戦後と日本人の集団性をテーマにした《After Wars》、コロナ禍の都市を離れ無人島で描いた新しい人間像《Isolated Memories》など、資本主義社会や歴史観への問題提起を大胆に織り込み、常にファッションの領域をこえた注目を集めてきました。また、教育者としても知られる山縣はファッションの私塾〈coconogacco(ここのがっこう)〉を主宰し、参加する一人ひとりが生きる場所や社会を見つめ、「ここ」から独自の表現を立ち上げていく学びと実験の場をひらいています。
美術館で初の個展となる本展「ここに いても いい」では、リトゥンアフターワーズのこれまでの歩みを紹介するとともに、山縣が考える日本社会とファッション表現の〈いま/ここ〉を新作インスタレーションで浮かび上がらせます。「日々ニュースから飛び込んでくるウクライナとガザの悲劇、そして能登半島地震と、個人では消化しきれない歴史の大きなうねりの中で、いま自分が表現できるのはとてもパーソナルなこと」と語る山縣。“writtenafterwards”とは、〈あとがき〉や〈追記〉を意味します。ファッションを通して常に自己と社会に向き合ってきた山縣は、混迷が続く私たちの世界にどんなストーリーを書き加えるでしょうか。

 

【アーティストプロフィール】

photo: Takashi Honma

山縣良和(やまがた・よしかず)
1980年鳥取生まれ。2005年セントラル・セント・マーチンズ美術大学卒業。2007年、ファッションレーベル「writtenafterwards (リトゥンアフターワーズ)」を設立。「装うことの愛おしさを伝える」をコンセプトに、既成概念にとらわれない様々なファッション表現を試みる。2009年にオランダ・アーネム・モード・ビエンナーレにてオープニングファッションショーを開催。2015年には、日本人として初めて LVMH Prizeにノミネート。また、 デザイナーとしての活動のかたわら、ファッション表現の実験と学びの場として「coconogacco(ここのがっこう)」を主宰。多くのデザイナーやアーティストが輩出し、2021年には、第39回毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を受賞。近年の主な展覧会出展に、2017年「装飾は流転する」東京都庭園美術館、2019年-20年「アジアのイメージ」東京都庭園美術館、2021年「ファッションインジャパン」国立新美術館、2023年「ミレーと4人の現代作家たち」山梨県立美術館など。
https://www.writtenafterwards.com
https://www.coconogacco.com/


【開催概要】

会期|2024年4月27日[土]− 6月16日[日](水曜休館)
開館時間|午前10時−午後6時(入場は午後5時30分まで)

主催|アーツ前橋
入館料|一般=800円|学生・65歳以上・団体(10名以上)=600円|高校生以下=無料
   *ギャラリー1(1階)は観覧無料
      *障がい者手帳等をお持ちの方と介護者1名は無料
         *「こどもの日」の5月5日[日・祝]は無料
後援|上毛新聞社、群馬テレビ、FM GUNMA、まえばしCITYエフエム、前橋商工会議所
助成|日本芸術文化振興会
宣伝美術|須山悠里(suyama design)

協力|東京藝術大学宮本武典研究室、FashionStudies®、PENSEE GALLERY、ROCCADIA DESIGN AND WORKS、桐生大学短期大学部アート・デザイン学科、亜州中西屋(ASHU)


【本展の特徴】

美術館がファッションの〈メゾン/家〉になる?

writtenafterwards《The seven gods》2012

フランス語の“maison(メゾン)”は〈家〉を意味しますが、ファッション業界では店や会社を指します。本展のメインギャラリーで山縣は、2024年現在の日本社会を表象する〈メゾン/家〉を、リトゥンアフターワーズの過去のコレクションと、群馬県内の空き家や廃屋から移設した家財道具を組み合わせて表現します。
その最後の部屋に追記(writtenafterwards)されるのは、何気ない家族の情景や子供服からインスピレーションを得た最新コレクション。そこには昨年父親となり、東京で子育てをはじめた山縣個人のパーソナルな変化が色濃く反映されています。“異次元の少子化”に沈みゆく日本の風景のなかで、ファッションを通して自己と社会に向き合ってきた山縣は、どのような“かすかな糸口”を私たちに示すのでしょうか。元商業施設をコンバージョンしたアーツ前橋の全館を使った、ストーリーテリングのような展示構成にもご注目ください。

リトゥンアフターワーズ《After Wars》2017

リトゥンアフターワーズ《After All》2019 

リトゥンアフターワーズ《Isolated Memories》2023

山縣良和《Field Patch Work》2023

リトゥンアフターワーズ《It’s Alright To Be Here》2024

 

ファッション表現の可能性を、多声的に「綴る」場をひらく。

山縣は私塾でありながら多くのデザイナーや国際コンテスト受賞者を輩出する「coconogacco」を主宰し、渋谷PARCOの9階では10代の学び舎「GAKU」を立ち上げ、ディレクターを務めています。本展ではこうした教育者としての山縣の思想と実践を伝える「それぞれの個性を育む学び場」を展示室内に開設。また、群馬県桐生市出身の写真家・石内都や、『スマホ時代の哲学』で知られる気鋭の哲学者・谷川嘉浩らとのトークセッションを行い、衣服の展示だけでなく対話やテキストでも、ファッション表現の過去・現在・未来について綴っていきます。

coconogaccoの授業風景より Photo : Chikashi Suzuki


【トークプログラム】
vol.1「山縣良和へのインタビュー “ここに いても いい?” 」
本展アーティストの山縣良和と担当キュレーター宮本武典が、展覧会ができるまでを語るオープニングトーク。
日時|4/27[土]午後3時〜午後5時(午後2時30分開場)
講師|山縣良和 × 宮本武典(本展キュレーター、東京藝術大学准教授)
会場|アーツ前橋スタジオ
定員|40名 →[定員に達したため受付終了]
参加費|無料 *要観覧券


vol.2「物語る衣服たち」
広島の被爆者やフリーダ・カーロの遺品など、〈亡き人々〉の衣服を撮り続ける石内都と、その写真作品から多くのインスピレーションを得てきた山縣良和。二人による衣服の〈モノがたり〉。
日時|5/12[日]午後3時〜午後5時(午後2時30分開場)
講師|石内都(写真家)× 山縣良和
会場|アーツ前橋スタジオ
定員|40名 →[定員に達したため受付終了]
参加費|無料 *要観覧券

石内都(いしうち・みやこ)……1947年群馬県桐生市生まれ。神奈川県横須賀市で育つ。1979年に「Apartment」で女性写真家として初めて第4 回木村伊兵衛写真賞を受賞。2005年、「Mother’s」で第51回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出される。2007年より現在まで続けられる被爆者の遺品を撮影した「ひろしま」も国際的に評価され、2013年紫綬褒章受章。2014年にはハッセルブラッド国際写真賞を受賞。2015年、J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)の個展「Postwar Shadows」では、「ひろしま」がアメリカの美術館で初公開された。

 

左より 石内都/畑中章宏(Photo:Shunta Ishigami)/谷川嘉浩/津野青嵐(Photo:Shikana Kohei)


vol.3「蚕と日本人の古今東西」
養蚕に強い関心を持ち、作品に取り入れてきた山縣。第3回の対話では『蚕: 絹糸を吐く虫と日本人』の著者・畑中章宏と、蚕の歴史と文化を掘り下げながら、その生命の循環の延長線上にあるファッションのあり方を探ります。
日時|5/19[日]午後3時〜午後5時(午後2時30分開場)
講師|畑中章宏(民俗学者)× 山縣良和
会場|アーツ前橋スタジオ
定員|40名 →[定員に達したため受付終了]
参加費|無料 *要観覧券
協力|FashionStudies®、jenelyno®

畑中章宏(はたなか・あきひろ)……1962年大阪府生まれ。民俗学者。著書に『柳田国男と今和次郎』『『日本残酷物語』を読む』(平凡社新書)、『災害と妖怪』『忘れられた日本憲法』(亜紀書房)、『天災と日本人』『廃仏毀釈』(ちくま新書)、『蚕』(晶文社)、『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)、『死者の民主主義』(トランスビュー)、『五輪と万博』『医療民俗学序説』(春秋社)、『宮本常一』(講談社現代新書)ほか。


vol.4「生き抜くためのファッション教育 − coconogaccoのアトリエから」
coconogacco設立から16年。「世界と自分自身の装いの原点に向き合いながらファッションを学ぶがっこう」の歩みを振り返りながら、そのメソッドの今日性について考えるトークセッション。
日時|6/1[土]午後6時10分〜午後7時30分頃 *午後5時40分よりアーツ前橋1Fエントランスで受付開始
講師|谷川嘉浩(哲学者)× 津野青嵐(アーティスト)× 山縣良和
会場|アーツ前橋 地下ギャラリー
定員|50名 [申込フォーム]
参加費|無料 *要観覧券

谷川嘉浩(たにがわ・よしひろ)……1990年兵庫県生まれ。哲学者など。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。単著『人生を外れるための衝動のみつけかた』(筑摩書房)、『スマホ時代の哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『鶴見俊輔の言葉と倫理』(人文書院)など。共著『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる』(さくら舎)、Whole Person Education in East Asian Universities, Routledgeなど。

津野青嵐(つの・せいらん)……1990年生まれ。アーティスト・ファッションデザイナー・看護師。看護大学を卒業後、精神科病院で約5年間勤務。病院勤務と並行して「coconogacco(ここのがっこう)」で学ぶ。2018年、欧州最大のファッションコンペティション“International Talent Support” にて日本人唯一のファイナリストに選出され、3Dペンで作った服が注目される。2019年「当事者研究」発祥の地である北海道「浦河べてるの家」(精神障害当事者等の地域活動拠点)に勤務(2022年退職)。現在は東京工業大学修士課程にて、「ファット」な身体との付き合い方を、衣服の共同制作を通して研究中。

 


【キュレーター・トーク】

当館の学芸員がツアー形式で会場をご案内し、各展示室の成り立ちやコンセプト、見どころなどを解説するプログラムです。
日時|会期中の隔週土曜日 午後1時〜午後2時(5/4土、5/18土、6/1土、6/15土)
会場|アーツ前橋 地下ギャラリー
定員|各回20名 [申込フォーム]
参加費|無料 *要観覧券

 

 

アトリエ風景 Photo: Shuichiro Miura                

【連携企画|タイアップイベントを渋⾕PARCO 9階 GAKU で開催】
Think of Fashion® Study 005 アート講座④ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口

ファッションを体系的に学ぶ場を運営する「FashionStudies®」と連携し、本展のタイアップイベントを渋谷PARCOで開催します。ファッションを通して常に自己と社会に向き合ってきた山縣良和と、東日本大震災の被災地や東京都心の多文化空間でアートプロジェクトを立ち上げてきた本展キュレーターの宮本武典が、ファッション&アートだけでなくローカルなものづくりや美術教育など、さまざまな角度から本展の試みについて語ります。

日時|2024年3月8日[金]午後7時開催(定員30名)〈このイベントは終了しました〉
会場|GAKU(渋谷PARCO 9階)
講師|山縣良和(リトゥンアフターワーズ)、宮本武典(キュレーター/東京藝術大学准教授)
主催|FashionStudies® 

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