アーツ前橋

展覧会

ゴースト 見えないものが見えるとき

2025.09.20 - 2025.12.21

本展覧会は、現代美術を軸とした絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションといったさまざまな表現を、“ゴースト”というキーワードから広げた幾つかの視点で紹介し、見えるもの・見えないものが生み出す謎めいた魅力を探ろうとするものです。
亡霊(ゴースト)のように立ち上がるイメージは、過去と未来をつなぐメディアになりうるのではないでしょうか。過去の歴史に対する批判、現代という時代の見直し、そして、未来への可能性。不確かなそれらのヴィジョンは曖昧で茫洋とした姿で立ち現れながらも、我々に新しい議論と多様な気づきをもたらしてくれることでしょう。
そのような“ゴースト”に潜む表現の「美」を、作家の豊かなイマジネーションによって浮かび上がらせることで、私たちを取り巻いている世界の見方について多くの示唆が与えられることになれば幸いです。

 

「ゴースト」は、過去のものでも空想でもない。
それは、私たちの視界の外側で、今この瞬間にも確かに“存在”している、もう一つのノイズである。
「ゴースト」という概念は、現代の混沌とした世界──戦争、分断、テクノロジーの脅威、環境破壊、そして人新世における絶望感──に対し、目に見えないもの、消えたもの、取り残されたもの、あるいは現在に忍び寄る過去の気配や未来の可能性の隠喩として捉えることができる。
この展覧会は、そうした“見えない存在”に目を向け、対話を試み、再び世界の一部として迎え入れることで、私たちの新たな可能性を開く場としたい。

── 本展ディレクター 南條史生

【開催概要】
会  期 2025年9月20日(土)-12月21日(日)
会  場 アーツ前橋 ギャラリー
休  館  日 水曜日
開館時間 午前10時-午後6時(入場は午後5時30分まで)
観  覧  料 一般1,000円、学生・65歳以上・団体(10名以上)800円、高校生以下無料
     ※1階ギャラリーは観覧無料
     ※障害者手帳等をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
     ※「群馬県民の日」(10月28日)、「文化の日」(11月3日)は入場無料
     ※10月11日(土)、12月13日(土)は「多様な学びの日」のため入場無料
主  催 アーツ前橋
後  援 上毛新聞社、群馬テレビ、FM GUNMA、まえばしCITYエフエム、前橋商工会議所
出品作家 国内16組、海外4組による作品約100点
(五十音順): 岩根愛、丹羽良徳、ハラーイル・サルキシアン、尾花賢一+石倉敏明、諸星大二郎、ヒグチユウコ、平田尚也、松井冬子、新平誠洙、丸木位里・俊、竹村京、西太志、クリスチャン・ボルタンスキー、横尾忠則、諏訪敦、アピチャッポン・ウィーラセタクン+チャイ・シリ、トニー・アウスラー、マームとジプシー、山内祥太、daisydoze


【本展の見どころ】

1. 多様なメディウム、テクノロジーで出会うゴースト
 人工知能(AI)や仮想現実(VR)などのメタバース技術は、魂や意志が生物だけに宿るという従来の前提を根本から問い直しています。いまや魂はゴーストのように漂い、機械や仮想空間へと拡散しつつあります。
 本展では、先端的な技術を用いてその変容を捉えた若手作家、山内祥太や平田尚也による新作のほか、彼らの先駆といえるトニー・アウスラーによる大規模な映像インスタレーションなどを紹介します。また、新しい絵画表現を見せる新平誠洙、西太志や、マンガ界の巨匠・諸星大二郎など、多様なメディウムによるゴーストの表現が一堂に会し、人間と非人間の境界を問い直します。

 
左:山内祥太《Being… Us?》2025年
右:新平誠洙《Phantom Paint #3》 2025年 Courtesy of ARTCOURT Gallery  Photo : Takeru Koroda

2. 歴史や土地のゴーストと向き合う
 戦争や政治的抑圧によって引き起こされた大量破壊と殺戮。その記憶・記録は、単なる過去ではなく、歴史の中で未解決の課題を現代の私たちに鋭く突きつけます。クリスチャン・ボルタンスキー、丸木位里・俊、ハラーイル・サルキシアン、丹羽良徳の作品を通して、私たちを揺り動かす歴史上の幽霊=ゴーストと向き合います。
 ゴーストは、土地やそこに住む人々の身体にも宿ります。横尾忠則、諏訪敦、アピチャッポン・ウィーラセタクン、松井冬子、岩根愛、竹村京、ヒグチユウコの作品を通して、土地の儀礼や自然の風景、あるいは個人的体験や感情などから立ち現れる、様々なゴーストの表現に触れることができます。

 
岩根愛《Shosuke Nihei, Kailua Camp—Maui, Hawaii》〈KIPUKA〉シリーズより 2016年 ©Ai Iwane, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

3. 前橋のゴーストを探る
過去の記憶を留めた古い街並みと、再開発によって出現しつつある新しい街並みとが渾然一体となった地方都市・前橋。そして街を見下ろす赤城山で育まれた伝承文化。これらをアーティストが取材して制作した作品をアーツ前橋の内外で展開します。尾花賢一+石倉敏明は、水にまつわる赤城山の伝説を取材した新作を館内で展示。マームとジプシーは、広瀬川周辺をリサーチし、前橋空襲の生存者や製糸工場の女工たち、劇団を主宰する藤田貴大の家族の記憶など、時空をこえて河畔から浮かび上がる声をもとにインスタレーションを制作。アーツ前橋の他、前橋文学館や周辺の店舗にも作品を設置します。daisydozeは、前橋生まれの詩人・萩原朔太郎をモチーフに、ヘッドフォンの音声に導かれて市街地を巡るオーディオイマーシブシアターを展開。それぞれの試みから、前橋に潜むゴーストが浮かび上がります。

 
尾花賢一《赤城山リミナリティ》2019年 撮影:木暮伸也

【関連企画】
①daisydozeによるサウンドイマーシブシアター
日時  展覧会会期中(所要時間30~40分)
会場  前橋市 中心市街地
参加費 300円(展覧会とは別料金)
申込方法 事前申込・事前決済 ※近日開設予定の専用フォームからお申込みください

②マームとジプシー《Curtain Call》街なか展示
マームとジプシーによる本展参加作品《Curtain Call》は、当館の地下ギャラリーのほか、前橋文学館オープンギャラリーなど広瀬川河畔に点在する4つのポイントをめぐる回遊型の作品です。各会場の詳しい情報は、決まり次第本HPでお知らせします。

【関連イベント】
①南條史生特別館長によるギャラリートーク
日時  9月28日(日)、12月7日(日)午後2時~3時
会場  アーツ前橋ギャラリー
定員  30名(事前申込)
参加費 無料 ※当日の観覧券をご提示ください。
申込方法 専用フォームからお申込みください

②学芸員によるギャラリートーク
日時  9月27日(土)、10月18日(土)、11月29日(土)午後2時~3時
会場  アーツ前橋ギャラリー
定員  どなたでも(未就学児は保護者同伴)
参加費 無料

③おしゃべりアートデイズ
アーツナビゲーターとともに、気づいたことや感じたことなどをおしゃべりしながら鑑賞するプログラム(展示中の2作品 所要時間約40分)
日時  10月11日(土)、11月8日(土)、12月13日(土)午後2時~
会場  アーツ前橋 ギャラリー
定員  各回5名程度(事前申込)
参加費 無料 ※当日の観覧券をご提示ください。
申込方法 専用フォームからお申込みください

※この他にも、背筋が寒くなる「ゴースト」な夜のイベント企画を準備中!
 詳細は決まり次第、当館HP、SNSでお知らせします。ご期待ください!

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